マシュマロより甘く、チョコレートより苦く
私はまず備え付けのドライヤーで髪を乾かした。
乾かしていると自分の髪からいつもとは違う匂いがした。私があまり好きではない、甘ったるい匂いだった。でも今更髪を洗い直すなんてことはできないから、そのままにした。
そして、そのあとに保湿をした。いつも化粧水は持ち歩いてるから、今日は特に役立った。
「莉桜」
「ひゃ」
耳元で声をかけられ、くすぐったくて変な声が出てしまう。
「え、もう出たの、輝羅くん…?」
私は恥ずかしい感情を隠すために何気ないフリをする。
「だって莉桜、俺がいなかったらそわそわするじゃん」
と輝羅くん。
「あれ、やっぱり図星?」
いじわるそうな笑みを浮かべる彼。
いつももカッコいいけど、お風呂の後だからか髪から水が滴っていて普段よりもっと色気が増している。こんなカッコいい姿、とても直視できない。私は赤い顔を隠すように、彼に背を向ける。
「ほら、ちゃんと俺と目を合わせろよ」
肩の上に優しく腕がまわされたかと思うと、ドアップで輝羅くんの整った顔が。
「え」
毛穴ひとつ見えないその真っ白な肌。女子が羨むくらいのまつげの長さ。形の整った鼻。全てが綺麗で、私はもう一度彼から目を逸らそうとする。
けれど
「ほら、逃げない」
と簡単に奪われてしまう唇。
「そんなかわいい莉桜に、いいニュースがあります」
輝羅くんが私から離れ、すたすたと歩いていく。
私から離れていく腕にちょっと寂しく思いながらも、私は輝羅くんについていった。
「はい、これ」
輝羅くんがごそごそと鞄をまさぐってから、とあるものを差し出してきた。
それは輝羅くんには似合わない、女子向けだと一目でわかるくらい真っピンクのかわいい包みだった。
「…?」
首を傾げる私に、
「いいから開けてみて」
と輝羅くん。そう言われたものだから、私は中身に傷をつけないようにそっと包みを開けてみる。