マシュマロより甘く、チョコレートより苦く





一限が始まる頃には、土砂降りの雨が降り始めた。



ようやくニ限が始まるくらいの時間に解放され、私は身だしなみを整えながら教室に戻った。



「もー、また有賀くんとイチャイチャしてたんでしょ」



萌映がちょっとほっぺたを膨らませながら言った。でももちろん本気で怒っているわけではない。



有賀くんーそれが、輝羅くんの名字。



「莉桜は羨ましいよね、めいっぱい愛されてて」



萌映は目を細めて私を見た。彼女の表情から悪気は何もなくて、ただ羨んでいるだけだと分かった。けれど、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。



「…」



何がいいの…?



私は確かに輝羅くんに愛されているかもしれない。



でも、私は嬉しくない。



こんなに縛られたくない。



なんでそんなこと言うの…?



そう思ったけど、



「あはは、いいでしょ!」



私は笑って嘘を吐いた。



「でもさ、最近ずっと遊んでくれないじゃん。私も莉桜のこと好きだから、遊びたいんだけどなあ。今日とか私部活ないし、どう?」



萌映…。



ごめんね、怒る対象は萌映じゃないのに。



「私も遊びたい…!聞いてみるね」



と私は言って、ポケットからスマホを取り出す。



もちろん聞く人は親…ではなく輝羅くん。



「今日は萌映と買い物してくるから、先帰ってていいよ」



私はLINEで彼にそう返信した。



「あ」



すぐにメッセージの横に既読の文字がついて、スマホが震えた。



< 21 / 100 >

この作品をシェア

pagetop