マシュマロより甘く、チョコレートより苦く
一限が始まる頃には、土砂降りの雨が降り始めた。
ようやくニ限が始まるくらいの時間に解放され、私は身だしなみを整えながら教室に戻った。
「もー、また有賀くんとイチャイチャしてたんでしょ」
萌映がちょっとほっぺたを膨らませながら言った。でももちろん本気で怒っているわけではない。
有賀くんーそれが、輝羅くんの名字。
「莉桜は羨ましいよね、めいっぱい愛されてて」
萌映は目を細めて私を見た。彼女の表情から悪気は何もなくて、ただ羨んでいるだけだと分かった。けれど、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「…」
何がいいの…?
私は確かに輝羅くんに愛されているかもしれない。
でも、私は嬉しくない。
こんなに縛られたくない。
なんでそんなこと言うの…?
そう思ったけど、
「あはは、いいでしょ!」
私は笑って嘘を吐いた。
「でもさ、最近ずっと遊んでくれないじゃん。私も莉桜のこと好きだから、遊びたいんだけどなあ。今日とか私部活ないし、どう?」
萌映…。
ごめんね、怒る対象は萌映じゃないのに。
「私も遊びたい…!聞いてみるね」
と私は言って、ポケットからスマホを取り出す。
もちろん聞く人は親…ではなく輝羅くん。
「今日は萌映と買い物してくるから、先帰ってていいよ」
私はLINEで彼にそう返信した。
「あ」
すぐにメッセージの横に既読の文字がついて、スマホが震えた。