マシュマロより甘く、チョコレートより苦く
「輝羅くん彼氏なんでしょ?そんならはやく言ってよねー。あんなイケメンになっちゃって」
「お母さん、違うの。これはー」
「莉桜!」
私を遮るかのようにやってきたのは…輝羅くん。
私を殴った、張本人。
「痛かっただろ…すぐに気づいてやれなくてごめんな…」
と、腫れ物を扱うかのようにそっと抱きしめてくる。
違うのに。
私は振り払おうとしたけど、身体が痛くてなにもできなかった。
「きゃー青春ね!私もそんなことしてもらいたかった!」
目を両手で隠すお母さん。
いや、ギランギラン目が指の隙間から見えてるけど。
てかそれどころじゃない。私の様子を見て、気づいてくれないの?
「え…もしかして輝羅くん莉桜を殴っている人と喧嘩したりした?怪我してない?」
「あー…ちょっと背中をぶつけたくらいですけど、でもそんな」
あははと首の後ろを触る輝羅くん。
私は彼をキッと睨んだ。
「ほんとごめんなさいね、莉桜はどんくさいからきっと足手まといになっちゃったと思うけど」
「いや、そんな足手まといなんかじゃ。莉桜のことがずっと前からだいすきだったので、俺としては助けられて本当に良かったです」
「も〜輝羅くんイケメン!莉桜にはもったいないくらいね」
「いえ、」
輝羅くんは私と目線を合わせた。
「俺にとってもったいないくらいです」
「…輝羅くん。ありがとうね。莉桜が目覚めるまでずっと待ってくれてたんだし、お菓子でも…」
「いいえ、もう目を覚ましたみたいなのでほっとしました。莉桜が無事だと分かったので帰らせていただきます。長居してすみません」
輝羅くんはにこりと微笑む。