マシュマロより甘く、チョコレートより苦く
まだ治ってもないのにそんなことをされたらひとたまりもない。
こんなに私の身体も心も弱いからこそ、こうなってしまっているのはわかってる。
けど、今は、———今だけは、殴られたくなかった。
ペアリングって、たしか右手の薬指にはめるものだったんだっけ。
私はそこにそっとペアリングをつけようとしたが、輝羅くんに断られた。
「そこじゃないでしょ」
だったらどこなのか、と尋ねると
「左手の薬指じゃない?」
と思ってもみないことを尋ねられた。
「ひだり、て…??」
私はオウム返しに言ってしまう。
「そ。だって俺ら、結婚するよね?だからちょっとはやくても良くない?婚約指輪みたいでいいじゃん」
「…それは、本当に結婚するときに取っておいた方がいいと思うけど」
思わず本音を吐いてしまった。
「ん?」
ふわふわとあたたかい笑顔を浮かべていた輝羅くんの表情が一瞬で険しくなった。