マシュマロより甘く、チョコレートより苦く
「はい」
輝羅くんがスマホを渡してくれた。
誰かと電話が繋がっているようで、画面を見ると“お義母さん”と記されていた。体温が急激に下がっていくのを感じる。
違うのに。私は輝羅くんのことが好きじゃない。それにこんなこと、したくもないのに。
「莉桜〜?輝羅くんと同居するんですってね!おめでとう!」
「え?お母さん私…」
「そんなに愛してくれる彼氏なら私も大歓迎よ、早く結婚しちゃいなさいよ。孫の顔を見れるのが楽しみだわ」
お母さんは私の言葉を大して聞きもせずにただただ自分の言いたいことを言っているだけ。
「ちが、お母さん…」
ブチッ。
お母さんはそのまま電話を切ってしまった。
お母さんが忙しいのなんて、分かってたのに。
でもどうしても許せなかった。
「…嫌だって…」
「そんなん言われても、もう決まったことなんだから仕方ないじゃん。お母さん公認だよ。それに俺と一緒に過ごせること、本当は嬉しいって思ってるんでしょ」
「…っ違うもん…!」
「違くない。目を覚ませよ、目の前に誰がいるって思ってるんだよ」
「…」
確かに目の前には輝羅くんがいる。かたち上、“彼氏”の輝羅くんが。
でも、…でも、私の運命の人は輝羅くんなんかじゃない。