マシュマロより甘く、チョコレートより苦く
「お風呂、先入ってこいよ」
と輝羅くん。
「え!いいよ輝羅くんの方が濡れてるし…」
「お前は女の子なんだから」
とやさしく言われ、ちょっと頬が赤くなる。
私はお礼を言って、お風呂に入った。
「はあ…」
シャワーから出るあたたかい湯気に包まれた私は、自然とため息をついた。
今日のデートも楽しかった。
輝羅くんの新しい一面も知れたような気がするし、会話だってたくさんできた。
でも、なんでため息が自然に出たんだろう。なんで、こんなに身体が疲れてるんだろう。
この時自分の身体に素直に従っていれば、この後嫌な目に遭わなくて済んだのかもしれない。
それに、………君と話すことはなかったかもしれない。
シャワーを浴びて出てくると、輝羅くんが真剣な面持ちでスマホをいじっているのが見えた。
私が来たのにも気づかずに、ただ私以外の誰かと向き合っているような、そんな感じがした。
それを見て、彼がどこか遠く感じた。
私が声をかけると、輝羅くんはスマホから目を離した。
「輝羅くん、お風呂先に使っちゃってごめんね」
「ううん。俺そんな濡れてないし、暑がりだから」
と言う彼。彼は私に対して、すごく優しい。
「俺シャワー浴びるから、いろいろ準備しといて」
「あ…うん」
なんの準備かはわからなかったけど、とりあえず頷いておいた。