妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
……そうだな、とまた誰かが言う。
劇が終わり、はけていくみたいにそれぞれが自分の席へ戻っていく。
河野さんはむっとしながら机を下の位置に戻し、鈴木さんも何も言わずそれを手伝っている。
椎名は窓の外を眺めて頬杖をつき、何やらしげしげと見ているようだった。
「どうかした?」
椎名の見ている方向を覗くと、正門の花壇に腰掛け、うつらうつらしている常木さんが見えた。
いつもの狐面はつけてないので表情がよく見える。
「あれ狐のお面の人じゃない? 誰か待ってるのかな」椎名が言う。
「うーん。どうなんだろ、寝てるように見えるね」
「あんなところで昼寝とは、変わった人だなあ」
とその時教室の扉がだるそうに開き、ここにきて担任がやってきた。