妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
side常木
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「もしかすると久美ちゃんが顔を出してくれるかもしれない」
と期待をしていたが伝えてもいないのに都合よく彼女が来てくれる、なんてことはない。
その代わりに、全然知らない女の子が屋上に入ってきた。
千秋神社より数倍小さい鳥居にもたれて座っている僕に気づかず、
その女の子は手鏡で自分の顔を覗き込んで、愚痴を漏らした。
「はあ、最悪だ。こんなことなら早めに退散しとくんだった」
何してるんだろうか。後ろから声をかけてみる。
「どうしました?」
「うわっ、キツネっ!!」案の定、驚かれた。
屋上で2回目のこの反応、デジャブである。
僕は狐面を横に被り直し、会釈する。はて、どうしたものか。
「顔、どうしたんですか?」
振り返った彼女は目元に黒い線が引かれていて、それを取ろうとしていたみたいだ。