妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
気まずそうに彼女は言った。
「ああ、なんか化粧してやるとか言われて落書きされたんだ。とんだ災難だよ」
「僕、ティッシュ持ってます」
袖をごそごそあさり、はい、と渡す。
「その袖は四次元ポケットなのか?」
彼女は横目で僕を見ながらティッシュでゴシゴシと拭く。
「知り合いの女の子がよく怪我をするので、ティッシュと消毒液と絆創膏は必ず袖に入れるようにしてるんです」
「おてんば娘か」
「と言うよりも、ちょっと鈍臭いんです。そこが可愛いんですけどね」
思わず頬が緩む。
「なんだ、彼女か」
「いえいえ、そこまでの関係じゃないんですけど。僕が勝手に彼女を愛でているだけです」
僕がホストなのか気になって一生懸命追いかけてくるようなおてんば娘は、拗ねてぷうっと膨れる頬がいやに可愛い女の子。
僕は久美ちゃんに骨抜きにされている。