妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
「それで私はその子を助けないまま中学を卒業した。そのいじめられていた子……
河野さんって言うんだけれど。おんなじ高校に進学したわけだ。
私はもうやんちゃしないって決めてたから、学校に化粧もして行かなくなったし、真面目に生活してた。
そんなら今年たまたま同じクラスになって、向こうはすごく明るい子になっていた。
元々こういう子だったのに、私たちがこの子の個性や自我を殺してしまってたんだと、そこでやっと罪悪感に襲われた。気づくにはあまりに遅すぎたんだよ」
女の子はぎゅっと自分の肩を抱き、縮こまった。
僕は彼女の話に耳を傾ける。
「途中まで河野さんは私が中学の時にいじめてたグループに属していたやつだと気づいていなかったみたいで、よく喋りかけてくれた。
でも流石に同じ中学なんだから気づかれるわな。
それで今度は私がいじめられる側になったわけだ。
当然の報いだと思う、だから罪滅ぼしだと思って甘んじて受け入れていた。
でもさ、私がいじめの対象になっていると、クラスで愛でられてる女の子がものすごく傷ついた顔をするんだよ。
これだけ言うと偽善みたいに思われるかもしれないんだけど、このクラスの中であの子が一番この状況に頭を悩ませているような気がするんだよな。可哀想に。
友人にはよく放っておけって止められてるけど、私と一定の距離感を保ちながら助けてくれる」