妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~



私だって、なんで鈴木さんとああいうことをしていたのかは少しばかり気になるけれど、我慢しているのだ。




だって私には抱き寄せていた理由を聞く権利がないのだから。





鈴木さんも私に知られたくないことなのかもしれないし、安易に聞けない。
この矛盾した気持ちはそっと箱にしまっておくべきものなのだ。





我々は俯いて歩きながら無言で千秋神社へと足を運んだ。
この渦中にあの椎名がいたとしても空気の重さに耐えられないだろう。




それくらいどんよりしていた。おまけになんだか空模様も怪しくなってきた。
ねずみ色の絵の具をベッタリと塗りつけたような天気。がっくしと気分が俯いた。




「……雨」




ぽつりと見上げて呟いたのとほとんど同時にバタバタととたん屋根を打ちつけ、あっという間に土砂降りになった。




「久美ちゃん走りましょう!」


「ふぇっ!」




つんのめるくらい強い力で常木さんに引っ張られ、数メートル先の千秋神社の軒下に駆け込んだ。



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