妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
ジロジロ見ていたので、常木さんがくるっとこっちを向いた。
「百面相してどうしました?」
と言われたので、悪しくも白々しく口笛なんか吹いて誤魔化そうとしたが、
口笛のふけない私はシューシューと息が漏れ出るだけなのである。
「ん?」と首を傾げる常木さんをどうにかそれで誤魔化した。
なんでもないですよーという顔をする。
口をとんがらせてプイッとあっちを向いた私はさぞユーモラスな顔だったことでしょう。
常木さんを見て「美しやっ」と拝んだことは内緒なのだ。
「袖のボタンが外れていますよ」
常木さんは私の袖を指さした。片方だけボタンが外れている。
「あら」と留めようとしたのだけれど、これがなかなか上手くいかない。
ボタンを穴に通そうとすればするほど、ボタンが逃げて留まらないのである。いつもはすんなりできるのに。