妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
幼稚園生の頃、みんなどんどん着替えを済ませて外に遊びにでるのに
ボタンが止めらずにグスグス教室でベソをかいていたことを思い出した。
しかし現在の久美ちゃん、もうそんなことで泣いたりしない。
だって私はもう高校生なのだ。「ふん」と胸を張ってボタンとの戦争を繰り広げる。
幼稚園児顔負けの不器用っぷりで、ボタンを留めるのに四苦八苦していると常木さんに笑われてしまった。
久美ちゃん、恥ずかしさで涙が出そうである。
「貸しなさい」
常木さんは私に目を合わせ「僕がやってあげましょう」と近くに寄ってきた。
「いい、自分でできるよ」
私はちょと意地をはりながら、腕を差し出すという極めて高度な矛盾をやってみせた。
常木さんがまた笑って、一瞬でボタンを止めてくれた。こんな情けないことがあるだろうか。