妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~



「で、誤解は解けたのか?」



鈴木さんが腰を下ろしながら言った。



「誤解って?」


「いや、だから屋上でのことだよ」




私は首を傾げる。常木さんはしゅんと肩を落としていた。




「は?」



鈴木さんはぽかんとした後、常木さんの方を向いて「おい、大丈夫なのか? 小野枝さん全然気にしてないみたいだけど」




「僕はショックでふて寝してしまいそうです………ちっともヤキモチ妬いてくれない」




鈴木さんは苦笑いを浮かべ、屋上であったことを話してくれた。





常木さんが鈴木さんを抱きしめていたように見えたのは、顔が汚れていたのを隠していただけで、やましいことは何もないのだ、と。





鈴木さんが泣いていたのを隠したのだと思っていた推論はおおかた正解だった。




鈴木さんが泣いていなくてよかった。
それが一番だ。



それに、常木さんが彼女を抱き寄せていたことにちゃんと理由があってよかった、とホッとする気持ちも。



「そうだったのね」


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