妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~


「オープンキャンパスに初めてきたので……どうやって回ったらいいかよくわからなくて」


「そんなことだろうと思った。よかった、追いかけてきて」



お兄さんは呵々と笑った。



 どこか見たいところはある? と言われて彷徨った挙句辿り着けなかった食堂に案内をしてもらうことにした。



お兄さんは法学部に所属しているらしく、お堅いのかなと思っていたけれど、フレンドリーにこの大学のことを教えてくれた。



この人はとてもいい人だ、と感服する。






 食堂は別の棟にあり、私達のいるところから少し離れたところにあった。


 どうやら今日は土曜の補講があるらしく、食堂は大層賑わっていた。
ここの定食は美味しいよ、とお兄さんは言う。



ふんわりハンバーグの匂いが鼻を掠める。うう、お腹すいてきたよ。
ざわざわとたくさんの話し声が聞こえる中



「じゃあ、僕はB定食にしようかな」


と、なんだか知っている声が聞こえた。


< 141 / 242 >

この作品をシェア

pagetop