妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~


抵抗する私をもろともせず常木さんは半分楽しい、そして半分は不服を体現する絶妙な力加減で私の頬をちぎろうとしてくる。




「あのねえ、久美ちゃん。君が見られてるんですよ」


「そんなことないよ。こんな質素な私に関心がある人なんていないって」


「……ここにいるでしょう」


「へ、なんへ?」




食堂の活気も盛んになり、常木さんの声はかけ消されてしまう。
聞き返してみたが常木さんからとどめのデコピンをお見舞いされてしまった。




 周りからは珍妙なものを愛でる視線が降り注がれる。





それは明らかに周囲の視線は私ではなく、常木さんに向けられたものだ。
よほど私の頬で遊ぶ常木さんがとても珍しかったのだろう。




私だってびっくりである。こんなに人からほっぺたをにぎにぎされたのは人生で一度だってない。



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