妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
「……とりあえず、場所変えましょうか」
私は常木さんに促され食堂を出た。
そして先ほどもらった地図には載っていなかった校舎の中に入り、誰もいない廊下をズンズン進んでいく。
使われていない校舎なのだろう、誰ともすれ違わないし隅っこには埃が溜まっている。
ここはどこ、と思いながらついていくと『旧図書室』と彫られた看板の掲げてある部屋に入った。
「ここ、私が入ってもいいとこなの?」
「内緒です」
常木さんは口元に人差し指を寄せて、口角を上げる。
その仕草がいやに様になっていて美しく、彼は意外と悪い大人なのだと思った。
「へえーー。常木さんもそういうことするんだ」
「秘密基地みたいでしょ。
昔、法学部が使っていた校舎なんですけど新校舎の方に移ってからはこっちは全く人が来ないんです。
蔵書の数だって新校舎より多いのに、もったいない」