妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
私は全て一旦忘れて、座敷に座る。
おばあちゃんはニコニコ私を見ている。
え、なに? 私が帰ってくるまでの時間に何があったと言うのだ。
おばあちゃんは常木さんと目配せすると
「ちょっとおばあちゃんお茶入れてくるね」と部屋を出ていってしまう。
「えっ、おばあちゃん!?」
気まずい空気の中、私を置いて行かないで〜、と心の中で大いに叫ぶ。
襖を閉めるのをぼーっと目で追っていると常木さんがこちらに腕を伸ばしてきた。
なんだ、と身構えると口にみかんを放り込まれた。
モグモグと咀嚼する。
美味しい。
「ごめんね、突然きて」
常木さんは珍しく敬語じゃない話し方をしている。というか、初めてだ。
私はみかんをごっくんしてから首を振る。
「いえ、全然大丈夫です」
なぜか私がかしこまってしまって敬語になると、常木さんは
「僕が敬語じゃなくなったら久美ちゃんが敬語になっちゃったよ」と可愛らしく笑った。