妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
僕にとって敬語で話さなくなることは、久美ちゃんの距離が今よりもっと近づくことを意味する。
だから今まで敬語で話すようにしていた。
じゃないともっと久美ちゃんと親密になりたい、深く関わりたいと………欲深くなってしまうから。
むしろ敬語で話すことに努力さえしていた。
しかしそれが、障害となるなら話は変わってくる。
───よし、と意気込んだ時、ちょうど久美ちゃんが帰ってきた。
タイミングがいいのかは分からないけれども、今日も彼女を愛でられるのであれば嬉しいことこの上ない。
そして驚いて落ち着かない様子の彼女を見るだけで……目に映るだけで、僕の内側から湧き出る愛おしさに溺れそうになる。
両親がこんなぐでぐでになっている僕を目の当たりにしたら、さぞびっくりするだろうな。
ドン引きされてもいいほどのできあがり具合だ。
僕は緊張した面持ちの彼女に口にみかんを放り込んだりして、愛おしさが爆発しそうなのを辛うじて抑えていた。
最初は照れくさそうにしていた彼女も、もぐもぐと口を動かしているうちに、落ち着きを取り戻しているようだった。