妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
弥白さんはゾンビのような足取りでゆらゆらと窓辺に近づき、鍵をおろし、窓を開けた。
ブワッと風が吹き込む。
「もうだめだ……僕は……久美ちゃんに嫌われたら、なんにも残らない……」
窓枠に手と足をかけて乗り出そうとする。ひどく不安定な体制で、こときれる寸前の蝉のような細い声で唸っていた。
時すでに遅し。
すでに変な気を起こしてしまっては、流石に置いて帰れない。
「何してるんですか! 早まらないでください!」
俺は慌てて後ろから羽交い締めにして、座布団の位置まで連れてくる。
バタバタと暴れる弥白さんなんて見たくなかった! 俺の憧れの弥白さんはどこにいってしまったのだ。