妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~



弥白さんはゾンビのような足取りでゆらゆらと窓辺に近づき、鍵をおろし、窓を開けた。




ブワッと風が吹き込む。




「もうだめだ……僕は……久美ちゃんに嫌われたら、なんにも残らない……」



 窓枠に手と足をかけて乗り出そうとする。ひどく不安定な体制で、こときれる寸前の蝉のような細い声で唸っていた。




時すでに遅し。




すでに変な気を起こしてしまっては、流石に置いて帰れない。




「何してるんですか! 早まらないでください!」



 俺は慌てて後ろから羽交い締めにして、座布団の位置まで連れてくる。



バタバタと暴れる弥白さんなんて見たくなかった! 俺の憧れの弥白さんはどこにいってしまったのだ。



< 182 / 242 >

この作品をシェア

pagetop