妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
「久美も別に嫌ってませんって!」
必死に宥める。人の家で自殺するなんて太宰でもしないだろう。
「いいや嫌われてしまったよ……完全に……なんせ、君がいない間に襲おうとしたし」
「は、はあ?」
おい、何してるんだ、と声を荒げて怒鳴りつけたいところだが、
そんなことをすれば確実にこの人は、窓からジャンプしてしまうだろうからやめておいた。
「だから僕は、もう……」
虚な目で窓を見つめ、這うようにしてそちらに向かっていってしまう弥白さん。
俺は彼の浴衣の帯をつかみ、それ以上は進めないようにする。
足を前に出しても、するするとムーンウォークのようになってしまうのが滑稽であったが自殺させまいと奮闘した副産物であるからして、仕方がない。