妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~



 ということで今回も同様、怪談話を巧みに使い、私は揶揄われていたのだった。



 心外である。


 もちろん怒った。


 私をおもちゃにしてー! と、しかし常木さんは嬉しそうに微笑むのである。




「あの時の久美ちゃん、素直で可愛かったなー。僕の作り話に踊らされて」と。




 そう、後になって常木さんから聞かされたのは怪談話が作り話であったこと、そして私が聞いた足音の正体だった。




「11時過ぎになったら、父さんが風呂から上がってきて濡れた足で部屋まで戻るんだよ。
それで、ビチャビチャになった廊下を母さんが拭いて追いかける。それがうちの恒例なんだ」



悪びれもせず言った。

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