妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
それにしても前は見えにくいし、頭の部分が重すぎる。
楽しいはずの夜祭でへこたれそうになっている私だったが、誰かから手を引っ張られて廊下から階段の踊り場に移動した。
やっぱり前が見えないから誰だかわからない。
つんのめりながらついていくので精一杯だった。
急に止まり、すっと視界が開けて外気に触れた。重かった頭がすっかり取られて……
目の前には常木さんがいた。
「やっぱり久美ちゃんだ」
着ぐるみでなぜわかる……。
「後ろ姿で分かるよ」
後ろ姿といえど、着ぐるみだぞ。
これで気づかれるのなら多分どんな姿でも気づいてくれそうだ。
そしてきっと『やっぱり久美ちゃんだ』と笑うだろう。