妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~



 そんな会話があった数年後、僕は久美ちゃんと付き合うことになる。


環が励ますために言った。


「まだ出会ってないだけ」は本当にその通りになった。



 当時は、まあその場しのぎで言った言葉なのだろうと思って軽く受け流していたけれど、現在でも交友のある環に、心から好きな人と付き合うことができたことを話すと




特に驚いた様子もなく「良いひとが見つかったんだな」と喜んでくれた。




 その相手がホストクラブにきたあの子で、僕が唯一会いたがっていた女の子だと言うことを話すと流石に驚かれた。



もれなく惚気を聞かせるとドン引きされてしまったのだけれど。





 もし中学生の頃の僕に声をかけられるなら──。



 自分の愛情の希薄さにがっかりしていた僕……。


そのせいで満足に育ててもらったはずの両親に心配をかけていること、


気にするなとは言わないが思い詰めるほどではないと、

過去の寂しげな背中に声をかけてあげられたらな、と思う。



「僕は前から君を知っていた、でもまだ出会っていないだけ」




おしまい。
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