妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
「じゃあ、僕はここでお暇します」
「え? もう帰っちゃうの」
「狐の面を被った男が夜の神社にいたら、みんなびっくりしてしまいますから」
「まあ、それは確かにそうかも」
私が常木さんを引き止める理由もないので、さようならすることにした。
「楽しかったです。それではまた会いましょう」
常木さんは立ち上がって狐面を被り直し、一瞥くれると正面の鳥居とは別の、
奥の石段を降りていった。
入れ違いに、真也が帰ってきた。
「今、お前誰かと一緒にいなかったか?」
石段の方を見つめていた私に声をかけたのは真也だった。
鈴木さんは一緒じゃないみたいだ。
「う、ううん。気のせいだと思うけど」
私は明後日の方を向いて答えた。