妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
まあ、普段なら鳥居の前で別れるところ、まだ一緒にいられると思うとちょっと嬉しい。
まさかちょっとどころの騒ぎではない。
大いに、完全に、舞い上がった乙女心は、とどまることを知らない。
「そういえばこの前、常木さんが降りていった石段ってどこに繋がってるの?」
「通ったことないですか?」
「うん、この前の肝試しの時に初めて気づいた」
「そうですか。表から出ると千秋路に出ますが、石段の方から出ると旧千秋路につながっていて抜け道になっているんですよ」
常木さんは表の鳥居を指さした後、流れるように奥の石段の方に指を向ける。
「そうなんだ、今日はそっちから帰ってみたい!」
私は雰囲気のある石段を指差しながら、まるで子供のように常木さんにわがままを言う。
そんな私を見て常木さんは
「どこへでも連れて行ってあげますよ。久美ちゃんの頼みです、喜んで。……じゃあ行きましょう」
と鷹揚な笑みを浮かべて先を歩いた。