妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
賽銭箱近くで腰を下ろしていると、遠くからパタパタと足音が聞こえてきた。
「常木さ〜ん」
カバンをぶらぶらと危なっかしい持ち方で、手を振りながらこちらに駆けてきた久美ちゃん。
あわや転んでしまう、と僕は3秒に1回はヒヤッとする。
砂利でバランスを崩しつつ、ちょこちょこと不安定な足取りでやってくる彼女に魅入っていると
僕との距離もあと数メートルといったところで危惧していた通り、彼女は石ころにつまずいてしまった。
久美ちゃんの体がふわっと浮き上がる。
「危ないっ」
咄嗟に地面を蹴って久美ちゃんを受け止める。彼女の重みが腕に伝わり、ちゃんと支えられたことに安堵した。
「あ、危なかったあ」
久美ちゃんは胸に手を置いて、ふうと息を吐き出す。
「ありがとう常木さん」
「そそっかしいですね。気をつけてくださいよ?」