妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
私が話の中に入れないで、もう帰ってしまおうかと思った時だった。
ぱちっと常木さんと目があった。
二人にやきもちを焼いて若干拗ねていた私の心を見透かしたように、常木さんは妖しい笑みを浮かべる。
「すみません、僕これから用事がありまして」
常木さんは二人に言った。
「ええ〜、もう行っちゃうんですかあ」
真衣が常木さんの袖を人差し指でつまんで引き止める。
これは前に椎名と真衣と私で見た雑誌の『異性を落とすテクニック』に書いてあったやつだ。
あれを実践するなんて………なんと志の高い!
ところが常木さんは、真衣のハニートラップになんの戸惑いも見せず、お手本のような会釈をして踵を返す。
「それでは失礼します」