妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
常木さんは「それでは」と二人のそばから離れ、私のほうへ向かってくる。
ガッツリ向かってくる歩みなので何やら伝え忘れかな、と首を捻る私であったが。
常木さんは私のそばまでくると、耳に顔を寄せ「寂しい思いをさせてしまいましたか?」と言った。
なんたる破廉恥な囁きであった。
私は赤面待ったなしで
「そ、そんなこと……!」
とタジタジになって答え、常木さんにふっと笑われた。
私の頭に大きい手が乗っけられる。
「次からは、奥の石段で待っています」
小声でそう言うと、くしゃくしゃと撫でらた。
「……え?」
私は猫のように目を細めて、妖艶に微笑む彼を覗き見る。
「……二人で会いましょう」
常木さんは袖に手を入れごそごそと取り出し、私に小さな紙を握らせた。