妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
「おひさです」
私はヘラッと笑う。
この必殺ヘラヘラで気まずい空気を断ち切りたいと目論んだのけれど、
常木さんは眉を下げてしまう。
どうやら失敗したらしく、夏の夜の生ぬるい気まずさが濃霧のようにぼってりしたものに変貌した。
「……もう来てくれないのかと思いました。
僕は……何か、嫌われるようなことをしてしまったのでしょうか?」
「いやいや、そんなことないよ。全然、これっぽっちも」
私は首を振って否定する。
嫌われるどころか、いつもものすごく紳士的でドキッとさせられている次第でございます。