妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
「そうですか」
常木さんは満足げに微笑み、その流れで手にキスをされた。
この時点で私の脳みそは恥ずかしさで思考停止していたので正常な反応はできない。
「よく言えました。久美ちゃんがそこまで言うならもう行きません」
「へ?」
常木さんはまた私の手を握り直して歩き出した。行かないって言っても、今週いっぱいはアルバイトの期間だったのではなかったか。
私が行って欲しくないって言ったから行かないって、ありなのか?
そもそも、なんで私にそんなこと聞いたのだ。分からない。全く見当もつかない。
「ああ、僕、今日で辞めましたから。心配しなくても大丈夫です」
んん?? 辞めた??
「……え、ちょっと待って。どう言うこと? 今週ってまだ月曜日だよ?」
「もともと今週は今日しかシフト入れてないんです」
「……と言うことは、からかってたの!?」
常木さんはこっちをちらっと見て妖しく笑った! 狐につままれた気分だ! キツネさんだけに! と私はまたプリプリ怒る。