妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
一瞬、目があったような気がした。
私が追いかけようと席を立った時、真衣が袖を掴む。
「今はやめときな、目つけられたら厄介だから」
「そうだぞ。久美ちんは首突っ込み屋さんだから、ほっといたらいいんだよ」と椎名もいう。
私は「うん……」と一度は席に座る。
「なんだよ、化粧してあげようとしただけなのに」と河野さんが呟いた。
そして教室は何事もなかったようにいつものざわめきを取り戻す。
みんなお弁当を食べ出し、喋り始める。
そうやって度々、教室の空気が乱れる。
落ち着いてる時は本当に何もないのに河野さんの気まぐれで、
ある日突然ドクっとドス黒い何かで教室を染めてしまうのだ。
「やっぱり、ちょっと鈴木さん探してくる」
2人はこんな私に呆れているのかもしれない。けれど、やらずに後悔するのだけはしたくないのだ。
「……はいはい、行ってらっしゃーい」
そう言うと思ってたよ、と2人は笑っていつものように私を送り出してくれた。