妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~
そうして、私は黙って引き返してきてしまった。
「ほんと、何してるんだろう……」
この言葉に尽きる。
鈴木さんのことが心配だったのに、あれを見た途端に自分の中の嫌な感情が心を占領した。
ほとほと情けなくって呆れる。私の行動原理は所詮、都合のいい正義感だったのだ。
「ああ! もう、アホか自分は……」
とぼとぼ教室に帰る途中、真也が通りかかった。
「おい、無視すんな」
かなりぼんやり歩いていたため、ビクッと肩を震わした。まさか話しかけてくるとは思っていない。驚いた。
正直なところ、今は誰とも話したくない気分だったが、無視する選択肢もなく結構通り過ぎてから足を止めた。