警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
企画部に助っ人にきて二週間。
いくら天野さんが感じが悪いと言っても上司は上司。
それに悔しいけど仕事は出来る。めちゃくちゃ出来る。つい見惚れてしまうほど。
新店舗のコンセプトの枠組みが出来ると、商圏の設定と調査、メニューの企画開発、店舗のデザインや施工を依頼する業者の選定、常務会へのプレゼンの準備が同時進行で進められていく。
それら全ての指揮をとる天野さんは休むことなく働き続けている。
常に誰かから報告が上がり、誰かに指示を出し、自分も率先して動く。
そんな彼の補佐をする私も、必然的に恐ろしい忙しさだ。
「蜂谷、内装業者のリストアップ出来たか?」
「はい。出力しますか?」
「いや、共有フォルダに入れておいて。後で見る。午後は松本と出てくるから」
「承知してます。歩行量調査まとめておきますね。他にありますか?」
「コーヒー」
「それはご自分でどうぞ」
「お前は俺の?」
「……何でも屋です」
元々企画部にいながら今回のプロジェクトに関わっていない女性社員達からは、羨むと言うよりも蔑むような視線の嵐。
それでも直接何も言ってこないのは、私が目に見えて忙しそうにしているのと、数日前に天野さんが企画部全体にプロジェクト期間の補佐は私で決定事項だと念を押したからだ。
あれは確か天野さんの補佐についた五日目、早速企画部でアシスタントを長くしているという女性社員に咎められた。
「どうして庶務課のあなたが天野さんの補佐なんかしてるの? 分不相応だってわからない?」
天野さんはじめ、プロジェクトメンバーが揃って外に出ているときを狙ってくるあたりが姑息だと嘆息する。