警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

「さすがに遠慮します」
「いいよ。今日付き合ってくれた礼だと思って」
「そんな。頂けません」
「無理やり誘ったみたいなもんだしな」

違う。そんなことない。

私だって、いつも以上にメイクに時間を掛けたり着ていく服に迷ったりするくらいには楽しみにしていた。

苦笑した天野さんの声はどこか少しだけ寂しげで。それなのに素直に口から言葉が出てこない。

天野さんは店員さんを捕まえて「これお願いします」と言って会計に向かってしまった。

ショップバックを渡されてふっと優しげに微笑まれると、もうどうしたらいいのかわからなくなる。

普段はあんなに意地悪なくせに。どうして急にそんなに優しく笑ったりするの。

今日一日で、私は何回ドキドキさせられるんだろう。

これは意地悪にからかわれるよりもタチが悪いかもしれない。


「えっと、このあとは?」

時計を見れば午後五時を回っていた。このまま帰るのか、まだどこかに行くのだろうか。

「天野さん?」

じっと見つめられて落ち着かない。探るような視線に思わず目を伏せた。

「とりあえず車行こう」

ショッピングモールの屋上の駐車場は西日が差している。眩しさに目を細めながら車の助手席に乗り込んだ。

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