警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
「腹減った?」
「いえ、あんまり」
「じゃあちょっと寄り道していい?」
ブランチとしてお昼ごはんは早めに取りはしたものの、ハンバーグが美味してく食べ過ぎたせいか空腹感はあまりない。
天野さんの問いかけに頷いて、シートに深く凭れた。
五分程しか走らせていないのに辺りが暗くなってきた。海沿いを走っているのか昼間感じたよりも強く潮のかおりがする。
車から洋楽が流れるだけで何も話さない天野さんの横顔をそっと覗き見ると、窓に右肘を掛けて片手でハンドルを握るのが悔しいほど様になっている。
「ん?」
じっと見ていたのがばれたのか、目だけで何?と聞かれた。
「いえ、別に」
ここで「今日はありがとうございます」と可愛く素直にお礼を言えたらいいのに。可愛げのない自分にため息が出る。
「もう着くぞ」
「はい」
車が停まったのは横浜の有名な大きい公園。少し歩いて展望スペースへ向かう。
……ベタなデートコース過ぎませんか天野さん。
恥ずかしくて俯きながら歩く。
土曜日というだけあって、そこら中にカップルが仲睦まじそうに歩いている姿がある。