警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

はじめての『褒める』を口実にしていないキス。

重なる唇が緊張で震える。息継ぎに少し離れた隙に舌で唇を舐められ口内に潜り込んできた。

「ん……っ」

初めての感触に、思わず自分の舌を引っ込める。それを追いかけるように少しだけ絡めたあと、最後にちゅっと下唇を音を立てて吸われて解放された。

ぐいっと濡れた口の端を拭ってくれる仕草にさえ天野さんの男らしさを感じてドキドキした。

「屋上の時」
「え?」
「初めてならそう言えよ」

初めて天野さんにキスをされた時のことが思い出される。

褒めて下さいと自分から近づき、なぜかキスをされて慌てて逃げ出したあの日。

「な、なんで、初めてって」
「内緒」

今日は内緒が多い。

また楽しそうな顔をしているのかと見上げて睨もうとすると、真剣な顔つきでこちらを見つめていた。

「……そんなの、どうやって言えって言うんですか」
「そもそもその容姿で初めてなんて思わねぇよ」
「私のせいですか?」
「いや。でも謝んないから」

謝られても困る。

確かに私にとってファーストキスではあったけど、驚いて逃げてしまっただけで嫌だったわけではない。

可愛らしい女の子のように、ファーストキスのシチュエーションに拘っていたわけでもない。

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