警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

「だから、俺に抱かれる覚悟が出来たらってこと」
「だ、抱かっ⁉」
「今日は大人しく送っていってやるから。そのかわり」

腕を引かれて翔さんの胸にすっぽりと抱きしめられる。

三十センチ近く背の高い彼は少しだけ屈んで私の耳元に唇を寄せた。

「あんまり待たせんなよ?」

色気をふんだんに含んだ耳に直接注がれるような囁き声に、なぜか膝がカクンと崩れる。

つい縋るようにコートの胸元を掴んでしまったせいで、身体に力が入らなくなったのが翔さんにバレてしまった。

「はは、真っ赤」

やっぱりこの人感じ悪い!

初対面で感じた第一印象は少しも間違っていなかった。

買ってもらったワンピースにそんな意図があるなんて思いもしなかった。なんて責任重大な贈り物をしてくれたんだろうと恨めしくなる。

可愛いから早く着て出掛けたいという気持ちと、値段が値段なのであまり気軽には着られないなという心配から、いつこのワンピースを着ようかと思案していた。

それがまさか、翔さんとの関係を進める覚悟を決める鎧になろうとは。

大事に持っているショップバックが急に重たく感じる。

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