警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
ドキドキさせられて悔しくて、でもこんなやり取りがどうしようもなく幸せで。
翔さんも少しは私のことを想ってくれていたりするんじゃないか。
そう自惚れるように思わせてくる翔さんを、好きになっていく気持ちが止まらない。
私がこのワンピースを着て翔さんの前に現れた時、私たちの関係がハッキリするんだろうか。
なんとなく気持ちが見えそうで見えない曖昧なところから、名前のつく間柄になれたりするんだろうか。
その時は、翔さんは私に何か言葉で伝えてくれるんだろうか。
なにか言い返そうと翔さんの胸を押し戻すと、翔さんは唐突に話題を変えた。
「そうだ。お前気になってると思うから」
先程までの壮絶な色気を引っ込めて、少しだけ言いにくそうに話を切り出す翔さん。
急に甘い空気が霧散していき、翔さんしか見えていなかった視界に夜景が映り込む。
なぜか感じる嫌な予感にぎゅっと喉の奥が締め付けられた。
「紅林さんのことだけど。あの話、本当だったらしい」
「あの話?」
何のことかわからずに、ただ彼の口から紅林さんの名前が出ただけで動揺する。
なぜ今……。
甘く身を焦がすような予感に胸を弾ませていたところに、彼女の名前を聞き冷水を浴びたように心が萎れていく。
「関西の企画部長との仲が会社に伝わったんだ。それで事実確認中は一緒に働かせられないってことらしい」
そういえば、先日給湯室で美山さんがそんなことを言っていた気がする。