警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

自分の中の翔さんへの気持ちが育っていく一方で、どうしても引け目を感じている自分がいる。

私は、あの人にふさわしくいられるんだろうか。

今は抑圧していた自分らしさを解放して対人関係を作り直し、与えられた仕事を頑張りたい。

そうすることで、少しでも自分に自信をつけたい。

翔さんは私が何か考えているのがわかっているのかいないのか、仕事帰りの飲み会で一緒になることはあっても、休みの日に誘ってくることはなかった。


* * *

「阿久津さんのバーテン研修、うまくいってるみたいだね」
「はい。光ちゃんもみんな熱心だと驚いてました」

金曜日の今日は私と翔さん、松本さんとキヨの四人というおなじみのメンバーで居酒屋で飲んでいた。

松本さんの穏やかな質問に笑顔で答える。

もう誰に何を言われても自分のしたいようにしようと吹っ切ってから、私は控えていたメイクもヘアアレンジもするようにしたし、ランチも誘われれば一緒に取るし、飲み会も気分が乗れば誰と一緒だろうが参加するようになった。

それをプロジェクトメンバーの人たちは驚いていたようだけど好意的に受け入れてくれて、以前にも増して円滑に仕事が進むようになった気がする。

今まで無駄に壁を作っていた自分を少しだけ反省した。

「ハッチーが阿久津さんと幼なじみだったなんてなぁ」
「店にもぜひ立ってほしいって打診したらしいけど、あっさり断られたって」
「あはは、そうなんですか」

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