警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
いつも気持ちよさそうに酔って陽気になるキヨが羨ましくなり、何を飲んでいるのかと聞いてみればハイボールだとグラスを差し出された。
ビールや焼酎など甘くないお酒は得意じゃない。
ハイボールも飲んだことがなくて、差し出されたキヨの飲みかけのグラスを受け取り一口味見させてもらおうとすると「やめとけ」と正面から翔さんに止められる。
私の持っていたグラスを勝手にキヨに返してしまい、どんな味なのか飲んでみたかった私は口を尖らせて彼を睨む。
「なんでですか」
「飲みすぎ。また寝落ちするぞ」
「ちょっ……」
「えー? ハッチー飲みすぎると寝ちゃうの? 初耳なんだけど」
窘められた言葉に、以前晒した醜態を思い起こして顔が赤くなるのがわかった。
何もここで言わなくてもいいのに。
「なに。事実だろ?」
相変わらず意地悪な顔でニヤリと笑う翔さんと、そんな彼の隣で驚いた顔をしながらもビールを呷る松本さん。
隣のキヨはニヤニヤしながら私と翔さんを見比べている。何をどう答えても墓穴を掘りそうで黙秘を決め込んだ。
そこに、小さくメッセージの受信音が響く。
音の主は翔さんのスマホで、彼は画面をタップして確認すると「悪い、少し電話してくる」と席を立った。