警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました


『俺は絶対泣かさない』

翔さんならきっと出来るんだろう。

イジワルなくせに頼りがいがあって、ちゃんと見ていてくれる優しい人。

部長との不倫や周りからの中傷に泣いた紅林さんを優しく包み込んで癒やしてあげて、もう二度と泣かさないように幸せにしてあげられる強さを持った人だから。

『あぁ、好きだよ』

翔さんの甘い告白が頭にこびりついて離れない。

私に向けられてものではなく、紅林さんに宛てたもの。

そう。私は一度だって翔さんに『好き』だと言われたことはない。

私が勝手に期待しただけ。勝手に自惚れていただけ。

恋愛偏差値の低い私は、あのご褒美のキスと見本みたいな定番のデートで舞い上がってしまった。

胸が潰れるほど痛い。

どれだけぎゅっと唇を噛んでも流れてくる涙は止まりそうもない。

立っていられないほど苦しくて、それでも早くこの場から立ち去りたかった。

居酒屋を出てまだ五分も歩いていないのに、崩れ落ちそうなほど疲労感が襲ってくる。

チューハイ二杯程度じゃ酔わないと思うのに、頭が割れそうなほど痛くて気持ちが悪い。

< 118 / 161 >

この作品をシェア

pagetop