警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
しかしあのバーで阿久津さんから蜂谷の過去を聞き、初恋もまだだという衝撃の事実を知った今、俺の気持ちだけ押し付けて性急にことをすすめるのはダメだと自制していた。
まずは恋愛経験のない蜂谷を怖がらせずに俺に落ちてもらわなくては。
蜂谷は宣言通りに会社にもこれまでとは違い、えげつないほど可愛い姿で出勤するようになった。
それだけではなく、今までの『関わるなオーラ』が一切なくなり、誰に対しても笑顔で接するようになった。
きっとこれが蜂谷の本来の姿なのだろう。庶務課で働いていた彼女はこんな風だった。
周りの目を気にして、過剰なほど他人との接触を避けていた彼女はもういない。
蜂谷を中傷していた女子社員達は未だにこそこそと何か言っているようだが、大半は雰囲気が柔らかくなり話しやすくなった彼女に好意的だ。
一緒に仕事をすることの多いプロジェクトチームのやつらも驚きつつ彼女に見惚れている。おかげで心配が尽きない。
「あのバカ。加減ってもんを知らねーから、周りの男共の戸惑いがヤバい。ほんと厄介」
『やぁね、意地の悪い言い方して。素直になりなさいよ、好きなんでしょ?』
「あぁ、好きだよ」
誤魔化そうとも思わないので素直に認める。
蜂谷が好きだ。
慣れない彼女に対し自制しようとしながらも、早く自分だけのものにしたくてあからさまなプレゼントをするくらい年甲斐もなくハマってしまっている。