警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
寒さだけではない震えに身体中が襲われ、下唇を噛みしめる。
一度ぎゅっと目を瞑り涙をすべて押し出してから、翔さんの胸を押し返し距離を取った。
「もう、やめていただけますか。こういうの」
毅然とした態度を取ったつもりが、自分で発した声が思った以上に情けなく震えていて愕然とする。
こんな弱々しく言いたいわけじゃない。スッパリと曖昧な関わりを捨てて、月曜からは何事もなかったかのように接したいのに。
こんな泣いてるような声じゃ、構ってほしいと願っているみたいにとられてしまう。
俯いたまま目も合わせないのではなおさら。
違う。本当にもう離れたい。紅林さんへの告白を聞いてしまった以上、もう私の出番はない。
自分に言い聞かせて首を振り、もう一度息を吐き出す。
「どういう意味だ」
「そのままの、意味です」
「説明しろ」
距離を取るために胸を押した手を掴まれる。私の手首が冷えているのか、翔さんの手が熱いのか。
どんな顔をしてそんなこと言うんだろう。無慈悲に響く翔さんの声。
なんでそんなに意地悪なんだろう。
今まで何度もそう思ったけど、ここまで憎くなるくらいに感じたことは一度だってなかった。
私は説明しなくてはいけなんだろうか。翔さんは紅林さんを好きだと聞いてしまったのに。