警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
「ははっ。いいんだよ、そのままで」
愛しげに頭を撫でてくれる大きな手が好き。
うっとりと目を閉じそうになりながら翔さんの甘い声に耳を傾ける。
「楽しく仕事をしてくれたらいい。やっかんでる周りの声は酷くなったら言って。だから、ずっと俺の隣にいろ」
「翔さん」
「最近のお前の変化で俺がどんだけ大変だったか。……気が気じゃねぇわ」
よくわからない不満を私にぶつけてくる翔さん。
なんだか頭がふわふわして、少しずつ考えるのが億劫になっていく。
ふと何も言わずに居酒屋を出てきてしまったことを思い出した。
「あ、ふたり大丈夫かな。松本さんもキヨ化してたし」
「何、キヨ化って。大体お前相田と……あすか?」
瞼がゆっくりと重たくなっていく。
泣きすぎたのかな。冷やさないと明日の朝ぶさいくになって大変かもしれない。もしそうなったら翔さんのせいだ。
うん、ぶさいくになったら翔さんに責任をとってもらえばいい。その顔で仕事に行ければやっかみも少しは減るかも。でも明日はお休みかぁ。
なんだか可笑しくなってクスクスと笑いが漏れる。
「お前しばらく禁酒だからな」
「翔さん」
「ん?」
「すき」
「ったく。誰が可愛くないんだよ」
わざとらしく大きなため息が聞こえた後、ふわっと身体が宙に浮き上がった感覚がした気がした。
ふわふわ、ふわふわ。いい気分。
翔さんの甘くて低い声。かすかに香る煙草のにおい。
「責任なんて、いくらでも取る。好きだよ、あすか。おやすみ」
私は幸せに包まれながら、ゆっくりと意識が沈んでいった。