警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
「あすか?」
「ひぇっ?」
「なんつー声出してんだよ」
「や、別に……」
「あぁ。なんか想像しちゃった?」
意地悪な顔でニヤリと笑う翔さん。
こういうとこ! こういうところが凄く嫌い!
「バカ!」
今までの週末のようにデートを楽しむはずが、時間が経つにつれ緊張で落ち着かなくなる。
そこにこんな意地の悪いからかわれ方をされれば、もう心臓がもたない。
翔さんなんて置いて先に行こうと一人すたすた歩いていくと、あっさりコンパスの差で追いつかれ手を取られる。
「ほら、買いに行こう」
指と指を絡ませて繋がれた手に、心臓がバクバクとうるさいくらい騒ぎ出す。
上目遣いにちらりと翔さんを睨んだのに「ん?」と優しい眼差しで私を見下ろしてくる。
こういうところ。こういう急に恋人仕様に甘くなるところがドキドキして困るのに……嫌じゃない。
結局、自分の家で着ているルームウエアよりも可愛らしいうさぎ耳付きのもこもこジップパーカーと、同じもこもこのショートパンツ、インナーのカップ付きキャミソール、さらにもこもこの靴下の一式を翔さんの家に置いておくように買ってもらってしまった。
こんな格好で翔さんの前に出られないって店員さんに見えないように何度も首を振ったのに、翔さんは「うさぎの耳付いてるパーカー初めて見た…」と静かに興奮して譲らない。
これも翔さんがお会計して、トイレに行ってくると店を出た背中を見送りながら、服を包む店員さんに「素敵な彼氏さんですね」と言われた。