警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました

それは会社の中だけでなく、今日のようにデートで外を歩いている時も、男女問わず翔さんに視線を奪われているのを肌で感じた。

一緒に仕事する前は関わりたくなかったせいであまり噂を気にすることもなかったけど、今思えばそれで正解だったと思える。

ただでさえ今も誰々に告白されたらしいなんて聞こえてくるのに、元カノ云々の話を耳に入れていたら過去とはいえ気になっていたかもしれない。

過去に嫉妬するほど生産性のないことはない。

わかってはいても少しだけ拗ねて甘えてみたくなって、緊張を隠すように憎まれ口を叩きながら、こてんと頭を翔さんの胸に預けてみた。

「言うほど慣れてねーよ。俺だって緊張くらいするわ」
「……優しい嘘ってやつですか」
「バーカ。もう黙れ」

ちゅっと音を立てて耳にキスをされると、ゾクゾクする感覚にじわりと涙が滲む。

おずおずと背中に手を回してみると、応えるように強く抱きしめられた。

「もう、やめてやれないけど」
「その覚悟でここに来てます」

重なった唇はすぐにこじ開けられ、強引に舌が割り込んでくる。

口内を隈なく蹂躙する俺様で横柄なキスなのに、逃げていた舌を差し出せば、まるで褒めるように髪や耳を撫でるその手はどこまでも優しい。

キスだけで心拍数が上がりっぱなしの私をゆっくりとベッドに押し倒す。上になった翔さんは壮絶な色気を孕んでいて、少し濡れた唇が私の瞼や頬、首筋に落ちてくる。

「あすか」

名前を呼ばれるだけで鼓動が弾む。

再び触れ合った唇はなぜか甘く感じて、もっと欲しいと願うとそれ以上に与えられる。

< 151 / 161 >

この作品をシェア

pagetop