警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
甘ったるい言葉がなくても、態度できちんと私を大切にしてくれているのがわかる。
小さなキスに私への気持ちがぎゅっと詰まっていたと感じたのは、きっと自惚れじゃない。
「私も。大好きです、翔さん」
ちゃんと伝えたくて恥ずかしさを堪えて目を合わせれば、なぜか翔さんは片手で顔を隠しながら盛大に溜息をついた。
「……お前」
「なんですか」
あれ、違ったかな?
好きだよっていう意味のキスだと受け取ったから、『私も』と返事をしたんだけど。
「いや。可愛すぎる彼女をもつと大変なんだって実感してるとこ」
「な、なんですかそれ」
どちらかといえば『モテすぎるイケメン上司が彼氏で大変』なのは私の方のはず。そう伝えれば、すでにくしゃくしゃな髪を乱暴に掻き乱された。
「無自覚なのがいちばん厄介」
「お言葉ですが無自覚じゃないですよ? 顔だけは可愛く産んでくれた両親に一応感謝してます」
容姿を褒められて謙遜すると嫌味に取られるというのは早い段階で経験済み。
自分でも可愛げがないと思いつつそう反論すると「そこじゃねぇよ」と呆れた声が返ってきた。
よくわからなくて首を傾げる私に、もう一度優しいキスが落ちてくる。
「まぁ、しばらくは加減してやるけど」
「翔さん?」
「お前にも責任とってもらうからな。覚悟しとけよ」