警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
それなら飲みながら話そうと初めて庶務課や人事課のお姉さま達に誘われて連れて行かれたオシャレな居酒屋で、この半年の間にあった出来事を洗いざらい喋らされてしまった。
平野さんはともかく、人事課の婚活戦士のお姉さま達まで優しく、時に茶化しながら話を聞いてくれて驚く。
あの『天野翔』の相手が私だなんて、驚いたり妬んだりされると思ったのに。
企画部での散々な中傷を聞かせてそう言うと、「任せて、シメといてあげるから」と恐ろしく美しい顔で言うので謹んで遠慮しておいた。
初恋を冷やかされ、恥ずかしくて居たたまれなくなった私は最終的にお酒に逃げ、女性ばかりだと油断したせいでお店で寝落ちしてしまい、平野さんが私のスマホで翔さんに連絡をして迎えに来てもらった……らしい。
後日翔さんからこっぴどく叱られ、諸々あって禁酒を誓った私。
そんな事情で、庶務課だけでなく人事課にまで私と翔さんの仲が知られてしまっているこの状態で、翔さんはなにやら部長に話があるようだった。
「ってことで、蜂谷ください」
仕事をしながらも耳はそちらに意識を向けていたら、とんでもない発言が聞こえてきた。
「お前なぁ」
「約束通り待ちましたよ。もう株主総会の後処理も新入社員の割り振りも終わりましたよね?」
「人事の秘書室に入れて育てとくって手もあるぞ? いつかお前だって上に行けば秘書が付く」
「まぁそれはいずれ。今はアシスタントが必要なんです」
「……公私混同じゃないだろうな?」
「心外ですね。部長だって彼女が優秀だから総務から出したくないってごねてるんですよね? 往生際が悪いですよ」
総務部長はやれやれとため息をつきながら庶務課のデスクの島に目を向け、私を見つけるとおいでおいでと手で呼び立てる。
何がなんだかわからないまま部長のデスクにふらふらと向かう。