警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
当然ながら学生時代からモテていて、私に心無い言葉を投げつける女の子の中には光ちゃんのファンも少なからずいた。
幼なじみというだけで彼に名前で呼ばれ、親しげに愛称で呼ぶのが気に入らなかったようだ。
それを知っているからきっと苦笑いになってしまうのだろうけど、私は気にしていない。
光ちゃんとは幼なじみというだけで何にもなかったので、言ってきた子たちは返り討ちにしてきた。
「それにしても、そのプロジェクトのリーダーはかなりモテるんだね」
「まぁかなり。見た目もいいし仕事も出来るから」
「あすかちゃんに決まった人が出来れば周りも落ち着くんだろうけどね」
「決まった人……」
そんな人がいれば、天野さんやキヨの近くで仕事をしていても許されるんだろうか。
美山さんたちに睨まれながら仕事することもなくなるんだろうか。
せっかくの休日にうんざりするような彼女たちの視線を思い出し、慌てて職場の思考を頭から締め出した。
「初恋もまだの子には難しいか」
クスッと笑いながら空になったグラスを下げてチェイサーを置いてくれる。
口を尖らせてその様子を見守る私が可笑しかったのか「次は?」と聞く声と肩が震えている。
「癒やされる甘いやつ」
「オッケー」
初恋。
その気持ちを知る前に、周りの人を警戒する癖が無意識についてしまった。